英名	Cinnabar
和名	辰砂（しんしゃ）
主な産地	アメリカ、中国、メキシコなど
モース硬度	2～2.5
比重	8.09
色	朱赤色、濃赤色、褐色、灰色、黒色など

シナバークォーツとは

硫化水銀からなる鉱物で粒状の集合か塊り状で産出されます。単結晶や結晶質のものは珍しく、光の反射で強い輝きを放つため「鏡面辰砂」と呼ばれます。
自然が創り出した、天然のシュプールを描く朱色の模様が楽しめます。
またシナバークォーツにみられる独特の斑点模様は竜血（りゅうけつ/ドラゴンブラッド）とも呼ばれます。
まさにその名が独特の模様を表すような別名です。

中国の辰州産のシナバーが有名だったことから「辰砂(しんしゃ)」、「朱砂(しゅしゃ)」という名前で呼ばれるようになったといわれています。
鮮やかな朱赤が特徴で、空気に触れても変色しない性質を持つため日本でも顔料として使用されていました。古いところでは弥生時代の壁画にシナバーの朱色を用いたものが発見されており、身近なものでは神社にある真っ赤な鳥居などもシナバーを主原料とする顔料で着色されているそうです。
かつては日本でも産出され三重県の丹生鉱山が有名でしたが、1973年に閉山しています。

シナバークォーツはもともと竜の血を意味するペルシャ語の「zinjirfrah」やアラビア語の「zinjafr」が語源となり、シナバーは竜の血が染み込んだ石だと考えられてきました。
このため古来の中国やインドでは不老不死を得、空中に浮き、大空を飛行し、神仙の境地を手にできる霊薬として、皇帝などの権力者たちがシナバーを大量に摂取していたといわれています。しかしながらシナバーは水銀の劇薬ですので、シナバーを服用することで水銀中毒に陥り亡くなってしまう人も多かったようです。
かの弘法大師こと空海も一説にはシナバーによる水銀中毒で亡くなったといわれており、霊薬の力を欲した説や腐敗せず即身仏になるために服薬した説など諸説あります。

また、現在でも「賢者の石」として解毒や不眠症、めまいや精神の安定に効く漢方薬として処方されることがありますが、シナバーは水銀であり毒性を持つため大変危険です。専門家の処方箋がない限りは絶対に体内に入れないでください。

シナバーは硬度が2～2.5と鉱物のなかでも低く柔らかい石になります。アクセサリーとして身に着ける際は強い衝撃を与えないよう取り扱いに注意してください。